昨年(平成25年度)から奥州市でも前立腺がん検診が始まりました。検診では前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)を測定するため採血を行います。その結果で、異常なし、数か月後に受診、すぐに受診の三段階に分けられ通知されます。数か月後に受診、すぐに受診と判定された方は、精密検査が必要となり、精密検査施設を受診することになります。当院も精密検査検診施設です。

精密検査目的に当院を受診された場合、尿検査、直腸からの前立腺の触診を行い、さらに必要があればPSAの再検査を行います。半分くらいの方はこの段階で問題なしになりますが、半分くらいの方は前立腺生検による確定診断が必要という結果になります。

前立腺生検は、肛門から超音波診断の機械を入れ、直腸を通して超音波で前立腺を観察しながら前立腺に針を刺し、組織を採る検査です。組織を採る場所は決まっており、それに基づいて生検を行います。生検数は施設によって異なりますが、最低でも6ヶ所、大体10~12ヶ所が普通です。私は県立中央病院、三愛病院、岩手労災病院、県立北上病院、県立中部病院で合計600-700例の前立腺生検を行ってきましたので経験は十分だと思います。以下に当院の前立腺生検方法を説明します。

当院は入院設備はありませんので、生検は当然、日帰りで行います。麻酔は痛み止めの坐薬になります。当日は12時30分までに来ていただき、浣腸、点滴、痛み止めの坐薬挿入を行い、13時30分から生検を開始します。検査自体は15~20分くらいで終わりますが、その後は止血剤入りの点滴、抗生剤の点滴をしながら安静にしていただきます。大体16時過ぎまで安静にしていただき、その間に高度の血尿や直腸からの出血がないことを確認し、帰宅していただきます。検査当日は帰宅後、自宅でも安静にしてもらいます。飲酒も当日は禁止です。また、生検後1週間程度はゴルフ程度以上の運動は避けていただきます。

以上が検査の流れですが、針を刺す検査ですから出血のリスクはあります。当院は外来での日帰り検査になりますので、抗凝固剤などを内服している出血のリスクの高い方の生検は行いません。また、麻酔は痛み止めの坐薬になりますので、これで施行できない肛門狭窄の方なども当院での施行は出来ません。これらについては診察を行い判断させていただきます。

昨年度は、精密検査で受診いただいた方のうち14人に前立腺生検を施行しました。その結果、生検を行った14人中10人が前立腺がんの診断となりました(陽性率は71.4%とかなり高率でした)。14人中13人を県立胆沢病院、1人を済生会横浜市南部病院に紹介し、病期診断、加療をしていただきました。

前立腺がんの診断、前立腺生検には十分な経験があり自信があります。精密検査は、ぜひ、当院に受診ください。