夜尿症は、夜間に作られる尿量が多すぎたり、膀胱が小さすぎたりして、そのバランスがとれないことで起こります。その頻度は6歳児の10~20%、小学校高学年の5%くらいと言われています。治療としては、まずは以下のような家庭での生活改善が第一になります。

①無理やり夜中に起こさない:無理に起こすことで抗利尿ホルモンが減り、夜間の尿量は増えてしまうことがあります。

②水分は日中に十分摂取し、夕方以降は控える:夕食以降は翌朝まででコップ1杯が適量と思ってください。

③規則正しい生活リズムの確立:早寝、早起き、決まった時間の食事を確立してください。

④寒さ(冷え症)を防ぐこと:特に冬ですが、寝る前にゆっくり入浴して体を温めること、布団を温めておくことなどを実践してください。

⑤日中は適度に我慢訓練をしてください(膀胱の容量を増やすのに有効です。ただし、過度の我慢はダメです)。

以上のような生活改善を行っても夜尿が以下の頻度以上の場合は内服治療の適応になりますので受診を検討してください。

・6-7歳:週4-6日以上の夜尿がある。

・8-9歳:週2-3日以上の夜尿がある。

・10歳以上:週1日以上の夜尿がある。

ただし、上記の基準以下でも、野外授業や修学旅行、泊まり込みのスポーツ少年団などで、お泊りの日の夜尿を止めたいとの希望もあるかと思います。これも適切な内服で可能ですが、内服の練習が必要です。切羽詰ってからの受診ではなく、少し余裕を持って受診されることをお勧めします。

受診していただいた場合は、まずは尿検査、背骨のレントゲン写真撮影を行います。尿検査で膀胱炎などの有無をチェックし、レントゲン検査で潜在性二分脊椎の有無を調べます。潜在性二分脊椎とは背骨の脊椎弓のくっつきが不完全で脊椎弓が分裂している状態で、脊髄の神経障害が起こり、おしっこの感覚の成長が通常の子供さんより遅れます。このため、夜尿症が遷延します。分裂が高度の状態だと歩行障害などを起こすこともありますが、夜尿症で見つかる場合はごく軽度ですので歩行障害などは起こしません。

治療薬としては以下の薬を夜間尿量、膀胱容量、日中の排尿状態などを参考にして使用します。

①抗利尿ホルモン薬:寝る前に内服することで夜間の尿量を減らします。

②抗コリン薬:膀胱容量を増やす働きがあります。

③三環系抗うつ薬:もともとはうつ病の薬ですが、以前から夜尿症の治療に用いられています。作用としては膀胱容量を増やす働きと尿道括約筋をしめる働きがあります。

夜尿症対策の3原則は「起こさない」「怒らない」「焦らない」です。とは言うものの子供さんと二人だけだと「起こす」「怒る」「焦る」になりがちです。そうならないためには上記の受診基準に合致しなくても受診してみるのもありだと思います。あまり悩まずに気軽に受診してみてください。